臨床の現場で働いていると階段の動作をクリアしないといけない場面にぶち当たることがよくあります。階段は上りと下りでは筋肉の使い方が異なっています。難易度としては上りの方が低い印象ですので、今回はまず階段の上りをスマートに行う方法をお伝えします。

この記事で分かること

  • 階段を上る時の身体の使い方
  • 階段を上るための筋力トレーニング
  • 階段を上る時に意識するポイント

階段を上る時こんな事ありませんか?

  • つま先が引っかかり転倒しそうになる
  • 上る時に膝が痛くなる
  • 何となく手すりがないと不安

上記にひとつでも当てはまる方は身体をうまく使えていないか、筋力低下の可能性もあります。

目次

階段を上る時の身体の使い方

階段を上る時には、主に3つの筋肉が役割を担っています。

1つ目は【大腿四頭筋】、2つ目は【下腿三頭筋】、3つ目は【大殿筋】です。

筋肉説明

 スマートな階段利用のためにこれら筋肉の筋力低下がないのはもちろんの事、重要なのはこの筋肉たちが協調的(タイミング良く)に働いているかどうかということです。今回はこの3つの主な筋肉に焦点を当ててどのように使っているのかを見てみましょう。

階段を上る際の力の役割分担

階段上るスムース

 階段をスマートに上る時には、上る側の大腿四頭筋(25%)大殿筋(25%)、対側の下腿三頭筋(50%)となっています。このくらいの比率で階段を上れると身体に負担が少なくスムースに行えます。では、次に上りに苦労する方のよくあるパターンを紹介します。この上り方は膝痛がある人に特に多く、より膝の負担が増える動きにもなります。

階段上る膝痛い

 スマートに上れない方(特に変形性膝関節症や膝関節手術後の方)に多いのが、100%近くを大腿四頭筋に頼っている状態で階段を上っているパターンです。動きとしてどんな特徴があるでしょうか?

  • 階段の前で立ち止まる、またはかなり減速する
  • 上る時に体幹が大きく前へ傾く
  • 上る側の膝関節が完全に伸展しない
  • 1足1段動作が難しい
  • (よいしょっ!と言う事が多い)

 これらに当てはまるような上り方では、関節に負担がかかります。特に変形性膝関節症などで疼痛がある場合には多くが大腿四頭筋に頼っている印象です。上る側に体重をかけ勢いをつけてあがるような方法という事です。そもそも膝が痛いのに大腿四頭筋の過剰収縮で膝蓋大腿(PF)関節への圧迫力も強くなりますます疼痛が増強してしまいます。

階段を上る為の筋力トレーニング

 筋力低下を予防するためのトレーニングは、階段動作を安定させるためにも重要です。今回は、先ほど紹介した3つの筋肉を使ったトレーニングをお伝えします。

階段を上るためのトレーニング①

スクワット
方法①立位で重心をつま先に移動します
②股関節と膝関節を同時に曲げます
③可能なところまで下ろしますがこの時重心はつま先のままです
④股関節と膝関節を同時に伸ばします
⑤最後に立位となる瞬間も同時に股関節と膝関節が伸びきるように意識します
注意点膝痛がある場合は浅めで実施するかもしくは、無理のない範囲で行ってください
強い痛みを感じながらは実施しないでください

 このスクワットによる運動のポイントは、とにかく股関節と膝関節を同時に動かすことです。よくあるパターンは膝関節が先に伸びて、そのあと股関節が伸びてくる動きです。同時に動かすことで、大腿四頭筋・大殿筋の協調的な動きのトレーニングとなります。

階段を上るためのトレーニング②

片足踵あげ
方法①片足立ちになります
②重心をつま先に移動します
③ゆっくりと踵を上げます
④重心をつま先に残したまま踵を下ろします
注意点動作はゆっくりと行います
踵を急激におろさないようにします

①②どちらの運動もつま先重心にしながら運動することが重要です。階段では重心を前方に置いた状態で行う動作なので、重心を前方に移動できないとスマートな動作にはならないからです。

階段を上る時に意識すること

 基礎的な筋力が向上したあとは少し意識を変えることです。具体的には、

  • 階段を上る前にスピードを落とさないようにする
  • 身体が前に傾かないよう意識する(困難の場合手すりを使用する)

 この2つを意識してみて下さい。ひとつ目の、階段を上がる前にスピードを落とさないようにするというのは、一度止まってしまうと例で挙げたように大腿四頭筋にほぼ100%の力を押し付けてしまいます。そのため、歩行からそのまま階段へと移行できる練習がベストです。練習として行う場合は、まずは10cm程度の低い段でスムースにできるようになることをおススメします。また、今回は上りのみでの内容としました。階段は下りの方が筋力的には必要であり、疼痛を訴える人が多いため、まずは上りをマスターすることを意識した方が良いです。ふたつ目の、体が前に傾かないようにする点は、大殿筋をしっかり使うためです。体幹が前に傾くと股関節屈曲位となり大殿筋の作用は乏しくなり、重心が前方にいくことで大腿四頭筋の負担が増えます。もし、自力で保持出来なければ手すりを持っても良いのでできるだけ真っすぐと姿勢良く行うようにしましょう。筋力や意識の高まりによりスマートな階段となると転倒もしにくくなり、平地歩行の改善にも役立ちます。