なぜ転倒したくないと思うのか?転倒予防の話をする前に理解しておくべき考え方です。これを言いたい理由は、何のための転倒予防が必要なのかを専門職として考える必要があるからです。

目次

転倒したくない理由とは?

 『骨折したくないから』『転倒すると痛いから』など様々理由はあると思いますが、パッと思いつくのはそのあたりではないでしょうか。もちろんそれは大多数の人がそう考えていると思います。ここでの話はさらに一歩進みます。病院の中だけという狭い空間の話なら病棟で転倒しないためなど理由はある程度限定的です。これが、病院を一歩離れ地域に戻る時から少し変わります。つまり、したい事が出来なくなるから。このしたい事には個人差があり、それに合わせた転倒予防が必要となります。

転倒予防ピラミッド

 わたしの考える転倒予防にはいくつか種類があります。今回は大きく3種類に分けて紹介します。下の図を見てください。これを転倒予防ピラミッドと呼ぶことにします。下から土台となる転倒予防であり、下の土台ができないと上へは行けません。3つの段階それぞれを考えていきます。

転倒予防の階層

日常生活の転倒予防

 一番基礎となる転倒予防です。日常生活を送る中で転倒しないためにはどうしたら良いかを考えていきます。『自宅内歩行』『トイレ』『お風呂』『買い物』などその人にとって必要な日常生活に関わるものです。まずはそこが安定していないといけません。歩行であろうと、車椅子であろうと、自力で日常生活を送るのであれば転倒しないようにしなければなりませんよね。病院からの退院時もこの視点の転倒予防が一番重視されていると思います。

日常生活の転倒予防

趣味活動の転倒予防

 日常は転倒せずに生活可能な人が、次に目指す転倒予防です。日常生活ではないため、絶対に必要ではないが様々な趣味に対して適応になる転倒予防です。例えば登山です。山道は、自宅周囲には少ないタイプの不整地歩行をしなければなりません。そして、傾斜もあります。必要な日常生活を超えた応用歩行です。趣味活動の中で、日常生活以上の転倒リスクがある場合はこれを考えなくてはいけません。人によっては、仕事の転倒予防になる人もいるかと思います。

趣味活動の転倒予防

ハイレベルな転倒予防

 趣味活動のレベルではなく、スポーツやそれに近い負荷の世界での転倒予防です。例えばアイススケートやスケートボードなど足部で道具を使用するものも含みます。ここでの転倒予防は2種類あります。1つ目は転倒しないための身体づくりです。体幹筋力やバランス能力などトレーニングにより転倒予防精度を高めるものです。2つ目は、転倒したときに骨折しないような準備です。転倒予防なので転倒しない事がもちろん主ですが、私は転倒をゼロにするのは難しいと思っています。それにレベルが高くなるほどそれが難しくなります。そのため、もしもの転倒したときに備えてヘルメットを着用するなど未然に怪我を最小限に抑える対策は、転倒予防のひとつだと思います。

ハイレベルな転倒予防

ピラミッドをどこまで上るか?

 ここで重要なのが、目の前の人もしくは集団が、どのレベルの転倒予防を望んでいるのかを把握する事です。高齢者の中には、『日常生活の転倒予防』が出来れば十分という方もいます。ただ、ホントはこんな趣味活動をしたいけど。と、諦めているだけかもしれません。話しを聞きながら目標を決めていきます。

さいごに

 転倒予防は全世代対象ですが、年代ごとや個人で目標が大きく異なります。骨折したくないから転倒予防をするだけではなく、どの段階まで続ける必要があるかを考えましょう。