今回は、理学療法士でなくても出来る、よく使う“歩行器“の選び方についてお伝えします。歩行器を選ぶ時に何を参考にしていますか?わたしは歩行器の設定の甘さから対象者が結果的に転倒に至ったこともあります。そんな経験から今回の内容をお伝え出来ればと思いました。歩行器はたくさんの種類がありますが、実際の現場では割と同様の歩行器を使用していることが多い印象です。つまり、ある程度はパターンがあります。特徴を比較しながら歩行器を解説していきます。

この記事で分かること

  • 歩行器を選定するための評価方法
  • 歩行器の特徴と選び方
  • 転倒しないための動作方法
“歩行器“記事の記事トップ画

歩行器を選ぶ前にすること

 歩行器を選ぶ時に、まず最初にするのは対象者の能力の把握です。これなしには、歩行器を選べませんのでここから解説していきます。とはいっても全ての事を把握するのは大変なので、ポイントをしぼりお伝えします。また、歩行器を選定するのは場合によっては専門職ではない場合もありますので、できるだけ簡単にできる方法で紹介します。
※今回の歩行器選定は、病気やケガ、認知症などの症状が主だって影響する方の場合での想定ではありません。運動麻痺や認知機能低下など症状がある場合に関しては、しっかりと専門職が評価を行い適しているかを判断してください。

対象者の能力を把握する3つのポイント

・下肢の筋力

 下肢の筋力測定のポイントは、大腿四頭筋の評価です。これは、膝の伸展方向へ作用する筋肉です。なぜ大事かと言うと膝折れと関係があるからです。歩行器の選定時に、膝折れしやすいかどうかを評価するのはとても大事です。方法は、椅子に座り対象者が膝を伸ばします。最大まで膝が伸ばせるのであれば、そこに評価者が抵抗を加えて筋力をチェックします。膝折れがないと判断するには、最低でも「0-5」の段階で、「4以上」は必要です。

膝伸展MMT“歩行器“に必要な筋力

・独歩でどの程度歩けるか?

 独歩で歩けるなら歩行器は必要ないのでは?と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。自宅内や高齢者住宅の居室内では独歩、屋外や施設内では歩行器が必要という方は意外と多いからです。では、どのような点を評価すればよいのか?もちろんTimed Up and Go TestやBerg Blance Scaleなど、きっちりと評価するに越したことはありません。しかし、理学療法士以外の職種ではあまり一般的ではありません。そこで、理学療法士として考えたポイントは2つです。それは、「横歩き」「後ろ歩き」ができるかどうか?です。どのくらいという明確なものはなくても良いです。実際に、横歩き・後ろ歩きをしてみてもらい安心して見ていられるなら「〇」、思わず手を差し伸べたくなるのであれば「×」とします。

・上肢の支持性は?

 歩行器を使用する上で上肢の支持性を見ておく事は重要です。なぜなら、歩行器の中には、手で把持する場合もあれば肘で支える場合もあるからです。では、どのように評価するのが良いでしょうか?簡単に評価する方法として、「手すりでの腕立て」を見てみます。具体的には、まず手すりから少し離れて肘を伸ばした状態で持ちます。その後、腕立ての要領で90°程度肘が曲がるまで行い、その後伸ばします。ゆっくり行い体重を支える事ができるかどうかを評価します。

“歩行器“使用のために上肢筋力測定、壁腕立て

歩行器の選び方

先ほどの3つの評価と、下の画像を見ながらよく使う歩行器のタイプを見てみましょう。主に4つのタイプがあります。

“歩行器“の選び方

1. 前腕支持タイプ(図左上)

 3つの評価をすべてクリアできない場合に検討する歩行器です。安全性が高く転倒リスクも低いのが特徴です。しかし、馬蹄型歩行器の場合は、ブレーキが付いていないものが多いため立ち座り時には注意が必要です。また、屋内である程度スペースがある・段差のない空間というのも条件になります。そのため、自宅よりは高齢者住宅で使用している方をよく見かけます。

2. 上肢支持タイプ・車輪なしor一部(図右上)

 3つの評価のうち上肢の支持性がしっかりしている場合に検討する歩行器です。滑らないため安定性があり段差も越えられるのが特徴です。一部というのは、部分荷重時のみ車輪機能が働いたり、前方のみ車輪が付いているものなど、4輪が常時車輪機能を果たしていない歩行器の事です。幅も様々な大きさがあるため、狭い空間でも使用可能です。デメリットとしては、車輪ではないので推進力に乏しく長距離向きではありません。そのため、広い施設や屋外よりは戸建て自宅内や高齢者住宅の居室内のみでの使用といった例が多いです。

3. 上肢支持タイプ・自在輪(図左下)

 3つの評価のうち独歩での横歩き・後ろ歩きが困難な場合に検討される歩行器です。屋内外で広く使いやすい歩行器で、加齢に伴い歩行に不安がある方には多く選ばれています。デメリットとしては、4輪ともに車輪のため段差が数cmと高くなると移動が難しく、重量があるタイプもあるため持ち上げて使うのも困難な場合があります。

4. 上肢支持タイプ・固定輪(図右下)

 3つの評価をすべてクリアしたけど、なんとなく屋外など歩くのに不安がある方が検討される歩行器です。歩行器自体が軽量のものもあり、段差の時には持ち上げて使用される方も多いです。デメリットとしては、固定輪のため側方や方向転換時の操作性が悪く小回りには向いていません横歩きや後ろ歩きが徐々に困難となってくると、操作性が悪いこの歩行器では、転倒リスクが上がってしまいます。適宜の評価が必要です。

転倒しないための動作方法

 歩行器使用中の転倒でよく聞く場面のひとつに後ろ歩きがあります。普段は使わない事が多い動きですが、着座時など日常生活ふとした時に使う動作です。後ろ歩きの場合は、使っている歩行器によって動かし方が異なります。①対象者が歩行器の外にいる場合は、まず歩行器を近づけ、その後対象者が後ろに下がります。②対象者が歩行器の中にいる場合は、まず対象者が後ろに下がり、その後歩行器を近づけながら下げます。※1)①の理由は先に対象者が後ろに下がると、比較的軽い歩行器だとタイヤが浮いて転倒リスクとなるからです。

※1 石井慎一郎 歩くことをどう教えるか?目的に見合った歩行指導のために PTジャーナル Vol1.54 No.12 Dec.2020 図5歩行補助具を使って後進歩行を安全に行う方法より文字抜粋

“歩行器“使い方

まとめ

 今回は、歩行器の選び方から転倒予防の方法をお伝えしました。簡潔に!をテーマにこの記事は作成しているので、もちろん個別ケースとして可能なところは他の部分も評価しましょう。また、疾患や認知機能低下などはさらに検討事項も増えてくると思います。また、歩行器の種類もかなりたくさんあり、機能も様々です。色んなケースを体験するなかで少しずつ歩行器選定の感度を上げていきましょう。

歩行器選定した上で、対象者自身の転倒予防アセスメントには以下をご参照下さい。